「外国語習得とグローバル人材に求められる条件とは」

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「外国語習得とグローバル人材に求められる条件とは」

高校まで勉強しても英語が話せるようにならない。「文法中心の授業が悪い」「英語を使う必要のない社会では無理だ」と色々なことが言われています。

ここで一つのデータを見て見ます。米国の国務省、(日本の外務省)が他国に職員を派遣する際にありふれた日常会話や制限付きの実務要件を満たすことができるレベルまでその国の言語を速習させます。必要だった研修時間の平均値を見ると英語に近い言語であるフランス語、ドイツ語などは480時間、ギリシャ語、ヒンズー語などは720時間、その中最も長い時間がかかったのが日本語の2760時間です。さらにほとんど全ての実務レベル、社会的、専門的な話題に参加できるレベルとなると5000時間とも6000時間とも言われます。

一方我が国の英語教育は、小学校3年生から高校卒業までで、1000時間に到達しません。つまり最低限の礼儀の要件が満たすことができるレベルになれば上出来という時間数です。1000時間には1000時間なりの結果がついてくるのは当たり前です。日本語話者が比較的短い時間で習得できる言語は韓国語、インドネシア語、スワヒリ語と言われています。つまり言語学的に母国語と離れている言語は習得までに時間がかかるのです。ちなみに母国語には出生から成人までには、63000時間触れていると言われます。したがって目標に対して絶対時間が圧倒的に足りないのが一番の要因だと言えます。

それではグローバル人材とはどんな人のことを言うのでしょうか? 英語がペラペラに話せる人ならば英語が母国語の人々は全てグローバル人材なのでしょうか? 

私はグローバル人材とは人は誰もが違っておりそれぞれにはそれぞれの正しさがあると理解し認めることができる人なのではないか、と思うのです。多様性というととかく人種の違い、宗教の違い、ジェンダーの違いなどがクローズアップされます。

しかし基本は「人はみんな価値観、正義が違う」ということを前提に、それを乗り越えてより良いより平和な社会の創造ができる人こそグローバル人材なのではないかと思います。

例えば経済的バックグラウンドの格差はますます広がっており、7人に一人の子供が相対的貧困家庭で育っています。山の民、海の民、大家族、核家族、農業、サラリーマン、誰一人として全く同じバックグラウンドの人はいません。兄弟間でも長子か末っ子かの違いもあります。

また私たちは様々な社会に属しています。一番小さい社会の家族、自分の町、山形県、東北、日本、東アジア、東アジアはアジア太平洋地区にアジア太平洋地区は世界に、地球は宇宙に属しています。大きさの大小はあれ、それぞれの社会の構成員は全て一人一人違うのです。その中で自分の得意を生かし、弱点は補ってもらいながら一緒により良い社会の創造を目指して共生していける人材がグローバル人材だと思うのです。 出土した青口刀子によって3000年前から交易をしていた山形は多様性を乗り越える力が今も脈々と生き続けていると思います。山形からたくさんのそんなグローバル人材が輩出される日を思うと今からワクワクします。

 【寄稿者】坪谷ニュウェル郁子 氏 プロフィール

  • 学校法人東京インターナショナルスクール理事長
  • NPO東京インターナショナルプログレッシブスクール理事長
  • 株式会社東京インターナショナルスクールグループ代表取締役
  • 文部科学省 国際政策特任フェロー  
  • 文部科学省 IB教育推進コンソーシアム関係者協議会 構成員 
  • 国際バカロレア機構国際バカロレア日本大使
  • 長野県教育委員会長野県WWLコンソーシアム運営指導委員会委員
  • 高知県教育委員会グローバル教育推進委員会委員
  • 広島県立広島叡智学園中学校・高等学校学校運営協議会副委員長
  • 港区国際力強化推進会議委員
  • 港ユネスコ協会理事
  • UWC日本協会理事など

略歴

神奈川県茅ケ崎市出身。 イリノイ州立西イリノイ大学修了、早稲田大学卒。1985年イングリッシュスタジオ(現東京インターナショナルスクールグループ)設立、代表取締役就任。1995年東京インターナショナルスクールを設立、理事長就任。同校は国際バカロレアの認定校。その経験が評価され、2012年、国際バカロレア(IB)機構アジア太平洋地区委員会の委員(現国際バカロレア日本大使)に就任。文部科学省とともに、教育の国際化の切り札となる国際バカロレアの普及に取り組んでいる。 

 さらに、2000年、軽度発達障害など個別指導が必要な中高校生のためのNPOインターナショナルセカンダリースクール(現東京インターナショナルプログレッシブスクール)設立、理事長就任。日本の教育に世界標準の教育を導入し、経済格差なく誰もが望んだ教育を受けられる社会を実現するため、2014年に財団を立ち上げ国際バカロレアの普及と生徒への支援の活動を続けた後、2018年には文部科学省IB教育推進コンソーシアムが発足し、関係者協議会の構成員を務める。

長年、グローバル教育に携わっていた経験から、自治体や大学などのグローバル教育に関わる委員会の委員を務める。また、内閣府の教育再生実行会議第9次提言の委員(現教育再生実行アドバイザー)も務める。

 著書に、『英語のできる子どもを育てる』(講談社)、『絶対、わが子は「英語のできる子」に!』(PHP研究所)『小学校総合的な学習英語活動Activity Pack  I~III』(東京書籍)『世界で生きるチカラー国際バカロレアが子どもたちを強くする』(ダイヤモンド社)

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